第18章 殺伐の春
足元にある小石を、相手へ蹴り飛ばした
「ぅ!」
銃口を向けていた人物に当たり作戦が失敗したのか
次がなくなったのか
そのまま何事もなかったかのように去って行った
殺伐とした気配が消え去り飛び出してきたナイフを見る
サバイバルナイフが2本に投げナイフ用のナイフが3本
1人は近接型だな、面倒くさい
踵で軽く地面を掘り起こし、指紋を付けないように靴で蹴って穴に入れた
その後、掘り返した地面を直してから物干し竿へと戻った
この時に視線を感じていた、後は向こうがボロを出せば、ね
腕まくりしていた、肌が露わになった所に
銃弾が掠ってよかったと思っている
せっかく貰った黄色のジャージを買い替えなくて済むと思って
力の入らない右腕をだらしなく下げ
傷口からは血が滴り落ちる
部室の裏から出て物干し竿の下を見ると籠はなくなっており
三輝さん辺りが回収してくれたのだろうと思い部室へ向かうが
『さて、どうしたものか』
こんな姿を見せたらとりあえず幸村君に怒られるだけでは済まされない
当分は誰かが僕の後を付けて来るだろう
『はぁ...』
扉の前に立ったもののどうすればいいか迷っている
南「氷月、遅かった、ね...」
『あ』
三輝さんが静かに扉を開ければ
三輝さんの視線が下がって行った
『え、っと...』
南「氷月!すぐに消毒しないと!」
そう言って左手首を掴まれて中に入れられると
「「氷月!!」」
皆が驚いた表情で此方を見る
南「此処!座って!」
『わかりました』
開いているベンチに座らされ
救急箱から消毒液、ガーゼ、テープ、包帯が取り出された
ガーゼで血をぬぐい取り、消毒液を掛けていく
『っ...』
消毒液に含まれるアルコールが結構効く
ガーゼで傷口を抑えてテープで固定したあと
丁寧に包帯が巻かれていく
南「痛くない?」
『平気です』
本当に痛みを感じない
やはり、人間として色んな物が足りないと自分で思った
幸「説明してくれるよね?」
『はぁ...』
仁「氷月」
心配そうな表情で言われたら何も言い返せない
とりあえず、タオルが飛んで行った所から
ナイフを埋めた事までを話した
皆は安堵の溜息を吐いてから
ようやく表情が和らいだ