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古きパートナー

第13章 テニス


回転の掛けられたボールはそのまま壁に張り付いた後

そのまま下に落ちて行った

それと同時にラケットが手から離れ地面に乾いた音を鳴らす

そして

仁「氷月!」

『......』

後ろからしっかりと抱きとめる

昨日も思ったが細い体じゃ

本当に食っておるのかと思うくらいにじゃ

暗くてよくわからんが

氷月の表情が苦しそうに歪んでおった

足以外の体には力が入っておる

すぐに壁まで連れて行き座らせると

自身の右手で喉元を強く締めておった

『ゲッホ...』

苦しそうな咳を何度も繰り返し

ヒーヒーと浅く呼吸を繰り返す

脈を図れば速くなったり遅くなったりと少しだけバラバラじゃった

息を吸えば速くなり、息を吐き出せば遅くなる

足の震えも昨日よりも大きい

俺は喉元を締め付けておる手を外そうとするが

氷月が首を横に降る

まるでこのままにしておいてくれと言っておるようじゃ

『き、もち、悪い...』

絞り出した声は切羽詰まってると言うのには表現がかなり不足しておる

俺の背後にある鞄から水の入ったペットボトルを取り出した

蓋を取り、口元まで持っていくとそれも拒んだ

暫くすると脈も落ち着き、今では肩で浅い呼吸を繰り返す

額には汗が染み出ており、足の震えも止まっておった

仁「飲めるか?」

『はぃ』

吐き出した息と共に返事をする

そのままペットボトルを渡すと

喉元を締め付けておった右手で受け取り

口から体内へと水を運んでいく

『ありがとう、ございます...』

仁「おん」

ペットボトルを受け取り蓋を閉める

仁「何かあったんか?」

『すいません、何か見えたような気がして、あ、多分、幽霊の類ではなく、フラッシュバック、みたいな物が』

途切れ途切れに紡ぎだされる声は掠れており覇気もなかった

仁「動けるか?」

『当分は、ちょっと』

仁「なら」

ラケットを終いながら聞けばやはり動けんようじゃ

俺はそのままヒョイと氷月を背負い鞄も持つ

『仁王君』

仁「なんも言うな」

『......』

俺はそのまま背負って帰って行った

背中に広がる温もりと柔らかな感触に胸が高まる、が

コイツの体重は軽すぎる

参謀から聞けば昼もあまり食わんらしいから

体調も心配になってくるナリ

俺は親か
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