第4章 第二章 一部
「……もしかして、ストーカーされてるの?」
疲れた顔のお袋が、控えめな声で訊いてきた。
第三者から見ても異常な事態らしく、お袋が心配そうに俺を見ている。
今まで俺には見せず、黙って引き出しへ仕舞っていたお袋の優しさがひしひしと伝わり、なんとも言えない気持ちが俺の心を支配した。
「うるせえな!! そんなこと聞く前に捨てとけよ!!」
が、しかし、俺はお袋の頬を右手で思いっきり打った。
そして、お袋に向かって言った。
「さっさと“小遣い”よこせ」
と。
「……うん、ごめんね」
頬を押さえたお袋が、慌てて寝室に消える。
「はい、大事に使いなさいね」
すぐに戻ってきたお袋は、俺に千円札を三枚渡した。
「たったの三千円かよ!! こんなんじゃ何も出来ねえし!!」
俺は親が汗水垂らして稼いできた金をクシャクシャに丸め、床に叩きつけた。
『その三千円ですら稼げないくせに何が“たった”だ』
親父や兄貴が居れば間違いなく怒鳴られているに違いない。
たが、今家にいるのはお袋のみ。わがままし放題の俺を叱れるような人間はあいにくいない。