第2章 第一章二部
山の方から聞こえてくる犬の遠吠え。目の前には不気味なほど静かな廃墟が。
俺達を進ませまいとする錆びた格子に、
『この先キケン、立入禁止』
と、書かれた看板が掲げられている。
「貸せ!!」
その看板の前で待っていた恭輔が、俺の手から缶ビール等が入った袋を奪い取った。
なぜ恭輔がそのような行動をとったのか謎だったが、今の俺は息をするだけでやっと。考える余裕など毛頭ない。
「…………」
きっと、奴も俺に教える気など更々ないのだろう。
恭輔は中身を確認すると、すぐに俺達の側から離れた。
「お前ら早くしろよ」
既にフェンスの向こうにいる恭輔が、小さく声をかけてくる
ニヤニヤと笑っているあたり、奴は何かを企んでいるのかもしれない。
「……おう」
俺は半ば恭輔を怪しんでいたが、息を正して抜け穴へと向かう。
廃墟の正面から50メートルくらい右に行くと、人一人通れる位の穴がフェンスに空いている。
それは、以前俺たちが工具で無理矢理空けた穴。もちろん、高松さんの指示で。