第2章 変わりもの
あの衝撃の発言の後、彼の口から発せられたのは
「あなたには…なるべく迷惑をかけないようにする……俺ができることなら何でもやる……。あと…あなたには触れないようにする……だから、お願い。」
という言葉だけだった。その後、再び黙り込みカフェオレを少しずつ啜る彼を眺めていると、とうとう日付をまたいでしまった。
さすがに睡魔に耐えられなくなった私は、自分の直感と彼の言葉を信じふたりで自宅へと向かった。
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そして不幸中の幸いか、今日は仕事が休みだ。いつも通りの時間に目を覚ました私はいつもとなんら変わりはない。
ただひとつ違うのは、扉を一枚挟んだ向こう側から小さな寝息が聞こえることだ。
昨晩、無事帰宅した私はベッドへと直行したい気持ちを抑えて彼に言った。
『私はリビングのソファで寝るので、ベッドを使ってください。』
内心、見ず知らずの男性に自分のベッドを貸すのはかなり気が引けたが、突然の出来事のため客人用の布団の用意などあるはずもなくそうせざるを得なかったのだ。
(ソファで寝ると身体痛いんだよな…けど客人用の布団はカビ臭いだろうし。明日は客人用の布団干してそれで寝よう)
いったいいつまでいるのだろうかなどという不躾ともとれる疑問は頭になく、翌日の寝具の心配をしていると
「いえ…僕は廊下でも玄関でもどこでも眠れるから…あなたはベッドで寝て…」
などと、人の家に置いてくれというなんとも非常識なお願いをしてきた割には大変謙虚な態度を見せたのだ。もちろん床で寝かせる気は毛頭ない。
見た目によらず頑固な彼をなんとか説得して、彼をソファで寝かせるということで昨晩は話をつけた。
とりあえず、彼が目を覚ます前にシャワーを浴びようと扉を開けた。すると規則正しい寝息がさらに近くから聞こえてきた。
(あ、ソファから脚出てる…)
昨日はあまり気にしていなかったが、彼はかなり背丈が大きいように思われる。私が寝るには十分な大きさのソファでも彼が寝ているととても小さく感じる。
ふと彼の容姿に興味がわき、彼を起こさないよう細心の注意を払って近づく。