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第5章 面影


壁外調査から帰る際も巨人と遭遇したらエミが始末していた。

その様子をエルヴィンも見たが、やはり表情は変わらない。

任務中に私情を挟むと壁外では死が待ち受けている。

特に団長であるエルヴィンを戦闘に参加させる訳にはいけないので、エミが主に倒していた。

1人で。

そうこうしているうちに門に到着した。

犠牲者は相変わらず多かった。

壁外から帰ると幹部達はそれぞれ犠牲者の家族の元に殉職通知の手紙を渡す。

その時に言われるのは大抵「人類の為に死んだのですね」
という言葉だった。

この作業は嫌いだ。

エミにも経験はある。

壁外での事ではないが、あの日エルヴィンが父からの手紙を持ってきた日の事。

どういう気持ちで渡してくるのかが今は分かった。

それぞれの兵士には家族がいて、死んだと知らされると悲しみしか無い。

エミは担当した家全てに紙を渡し終え兵舎に戻った。

気分が悪い...

自室に戻ると報告書を書かなければならないが、今は無理だ。

そう思ってベッドに倒れ込んだ。

仕事をしなければいけないのは分かっている。

ただ問題があった。

巨人と対立した時の記憶が全く無い。

それは今回だけでない。

今までの壁外調査でも自分が何体巨人を殺したのか...

むしろ、どう倒したのかさえも分からない。

「団長に相談しないとな...」

そう思ってエミは団長の執務室へと向かった。
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