第5章 夢中になれるコト @ 孤爪研磨
『…孤爪くん?』
「あ、花…」
『部活早上がり?』
「ん…なんか調子でなくて。」
気まずい空気が流れると思ったら、花は笑顔で研磨の方に寄ってきて、お菓子の袋を差し出した。
「…アップルパイの?」
『好きって聞いたから。』
「…誰に?」
『…黒尾先輩。』
その言葉を聞いて思わず目が丸くなった。
「…なんで?」
『そりゃ、好きな人が好きなものとか…知りたいと思って…。』
花が俯いていた顔を上げると、研磨の顔は真っ赤だった。
『あっ…なんかごめん…』
「あっ…えっ…と…あの…俺も…うん…」
それを影から見つめていた黒尾は、なんという甘酸っぱい青春カップルだろうと、親父のような言葉を漏らしていた。