第26章 【何かおかしい】
結局美沙は義兄の部活が終わるまで狭い場所で無理な姿勢で寝くたれていた訳でしかも辺りが片付けまで終わったことにも気づかないまま起きてこなかった。
「美沙さん、起きませんね。」
谷地が言う。
「寝起き悪いんだから。」
力は呟いてから義妹に呼びかける。
「おーい、美沙ーっ。終わったから起きろー。」
力の声は決して小さくなかったが美沙は身動き一つしない。
「美沙ーっ。」
もう一度力は呼ぶがやはり義妹は反応しない。
「俺行きましょうか。」
日向が何故かワクワクテカテカした様子で言った。
「あ、いや、気持ちだけ受け取っとくよ。」
日向にやらせたら美沙がびっくりして別の事故が起きそうだ。
「で、どーすんだ。このままだとお前ら帰れねーぞ。」
田中が言うと力はため息をついた。
「非常手段に訴えるか。」
「は。」
聞き返す田中にしかし力は答えずとっとと二階へ通じる梯子を登り始める。
「非常手段て普通に行って起こすだけなんじゃ。」
山口が呟く。聞こえていない力は梯子を登り切り、奥まで進んで寝くたれている義妹の元にたどり着いた。
「美沙、起きな。」
とりあえず声をかけてみる。義妹は身じろぎするが起きるまでに至らない。しかたないので力はほおをペチペチしてみる。
「ガキかよっ。」
その様子を見た田中が突っ込み、
「似たよーなもんでしょ。」
月島が冷めた調子で言う。一方美沙はうっすら目を開けたがそれでもまともに起きていない。
「ほら、帰るぞ。」
力は言い、美沙はんー、と声を出した。起きようと努力はしているようだが全くうまくいってない。
「美沙。」
「むー。」
駄目だこりゃと力は思う。非常手段に出ることにした。
「いい加減起きないと」
義妹の耳元でこそっと囁いた。
「みんなの見てる前で抱っこするぞ。」