第47章 【越えてしまえ】
「いいだろ、どうせ血は繋がってないんだ。」
言い訳するように力は呟き、美沙がえ、と呟く。
力の指が美沙の小さな唇をそっと撫ぜ、次の瞬間に力はとんでもないことをした。男子排球部の野郎共が見たら縁下が今度こそ狂ったとパニックになりそうな光景だ。澤村ですらショックで気絶するかもしれない。
義妹の唇に力は自分の唇を重ねていた。驚いた美沙がうぐと一瞬唸るが一度では飽き足らず何度もした。ひたすらこの義妹が愛しくてたまらない。元々美沙が縁下家に来た時からこの子いいかもと思っていた。そこへあまり慣れていない頃から美沙は力の為に戦い、傷つき、何故そこまでしたのか聞けば妹だからだと当然の事として答えたあの時から力は美沙の虜になった。根性なしで何かと自信が持てない自分を愛し、守ることを当然と考え、慣れない事だらけの中逃げないその姿勢に惹かれた。そしてそれを失いたくないと考えた力は美沙が自身では気づいていない気持ちを利用して縛りをかけたのだ。
「にい、さん。」
美沙が疑問形で途切れがちに呟くが力はやはりその唇を塞いだ。
「いい子だね。」
唇を離し、驚いて固まっている美沙に力はにっこり微笑んだ。
「何で、どないしたん。こんな」
ただでさえ今日ボロボロになることがあったのに思わぬことが起きたからか流石の義妹も混乱しているのがよくわかる表情だった。
「大丈夫、怖くなんかないから。」
力は言って義妹の頭を撫でてやる。
「せやけど兄さん」
力は何か言いたそうにする義妹の唇をまた自分の唇で塞いでから言った。
「本当はずっとこんな事しちゃいたいって思ってた。そんだけ大好きだよ。美沙は。」
義妹は小さく私も、と答える。
「大好き、兄さん。」
ああ、くそと力は思った。同じ学校の奴にも他校の奴にも一線を越えかけていると言われた兄妹は今度こそ一線を越えてしまった。もう戻れない、ただでさえ依存し合っていたのにどちらかが欠けたらきっと自分達は生きていけない。