第45章 【義兄の怒り、義妹の涙】
すっ飛んできた木下に事を告げられて間に合わないかもしれないと思いながら一緒に現場へ飛んできてみればギリギリにも程がある状態だった。
あともう少し遅かったら美沙は相手へ完全に攻撃を当ててしまい、事態は最悪のところへ行っていただろう。それでも美沙は傷つき、あのざまで途中から聞こえていた話を聞いた限り自分のせいであることは明白で力は胸が痛んだ。とりあえず義妹を落ち着かせてやらないとと思い、声をかけた。
「美沙。」
「兄さん、私。」
「ごめんよ、俺のせいで。」
義妹は何が言おうとしたが、大体言いたいことは察しがついていた。そんなことは思ってないし言っていないというところだろう。だがこの事態、そもそも自分が美沙に入れ込んでなければ起きていなかったかもしれない。
込み上げてくるのは美沙を傷つけられた怒りと自分に対する怒りと美沙に対する愛しさだがグチャグチャ考えるのは後だ、まずはこの場を収拾する必要がある。
「少し行ってくるからね、」
ボロボロと涙をこぼす義妹に言い聞かせるように力は言った。美沙を落ち着かせるにはこれが一番だ。
「みんなと一緒にいるんだよ。」
それから仲間達に言った。
「悪い、美沙を頼む。またぶっ飛びそうだったら無理矢理にでも抑えてやって。」
仲間達は心得たといった感じで頷く。
俺は本当に恵まれているよなと思いつつ、力は階段を上がり事の発端になった3人のところへ歩み寄った。
「ごめんよ、何か妹が世話になったみたいで。」
言いながら今自分はどんな顔をしているのだろうかと力はぼんやり思う。相手方が3人とも顔が青くなっている気がするのだ。
「次から気をつけさせるからさ、この場は抑えてやってくれないかな。」
相手その2が何か言いたそうだったがここで力は思い出したかのように言う。
「君らも確か運動部だったよね。この現場あの教頭あたりに見られたら面倒なのはお互い様だろ。」
ここで相手その3がお前狂ってる、と呟いた。
「何が。」
聞き返す力は自分でもびっくりするくらい発した声が冷たくなっていた。