第41章 【青葉城西と遭遇】
焦っているため美沙は語尾が無茶苦茶である。
「他には。」
「国見君が嫁嫁言うてくるんやけど兄さんと何かあったん。」
「何もないよ。」
「ほんまかいな。」
「とりあえずお前今いるとこ教えて、迎えに行くから。」
「兄さん、部活はっ。」
「今日は休み。」
「どのみち大丈夫やから、1人で帰れるからっ。」
「うん、黙ろうか。」
「ひいいいいいっ。」
美沙は顔から血の気が引く思いである。これ以上の抵抗は危険だ。渋々今いる場所を義兄にざっくり伝えて電話を切った。
「最悪や。」
「どうしたー。」
花巻が呑気に聞いてくる。
「迎えに来るて。」
その場にいた青葉城西陣ほぼ全員が吹いた。吹かなかったのは国見で完全に呆れている。
「旦那どんだけ。」
「せやから旦那とか嫁とかやめたって、泣くでしまいに。」
美沙はしょぼーんとした顔をする。
「ホントに溺愛されてるな、何でなの。」
松川に聞かれても美沙にはわからない。
「及川が美沙ちゃん実は尽くす系って言ってたぞ。」
「あのにーちゃん、ぶっ飛ばす。あることないことどころかないことないこと言うてからに。」
「軽いから跳ね返るんじゃないすか。」
「金田一君やったっけ、誰がマジレスせえと。」
美沙はとっとと1人で帰りたくなった。何故に義兄は迎えに来るなどと言ったのか。もしやこれは連中に突っ込むのに夢中で定時連絡を忘れた罰かとまで勘繰ってしまう。
「尽くす系、ああ何となくそれっぽい。」
国見がボソリと呟いた。
「まじか、国見。」
矢巾がいう。美沙はもう嫌になってきたとそっぽを向いて黙っていたが
「あっ、俺のケータイ電池ヤバい。」
渡が声を上げた。こういうのをスルーできないのが縁下美沙である。
「使われますか、バッテリーパック。」
美沙は言って鞄をゴソゴソ探った。
「ちなみにキャリアは。あ、それですか、じゃあアダプターはこれ、そこに刺していただいて。ほなスイッチ入れます。」
「充電始まった、ありがとう。でもごついバッテリーだね。」
「状況が許せばスマホ一台分丸々充電出来るタイプらしいです。」