第2章 背負うもの
そんなに時間をかけたつもりはないのに、
朝陽はもう膳を並べていた。
今日はご飯に味噌汁、魚の煮付け、
ほうれん草のおひたし。
質素だけど、朝陽の作るご飯はとても美味しい。
「頂きます」
「頂きます」
神に祈りを捧げ、食物に感謝の意を伝える。
私は、この瞬間が好きだった。
「うん、美味しい。さすが朝陽!」
魚の煮付けをパクっと食べて声を上げると、
朝陽は満足そうに頷いた。
それからは黙々と食べていく。
「美夜」
私が膳を片付けようと立ち上がった時、
突然朝陽に声を掛けられた。
とりあえず膳を持ち上げ、流しに持っていく。
「朝陽...何?」
お椀を洗いながら問うと、朝陽も膳を持ってきて
私の隣に立った。
「今日は、今から2時間後にやろう。
午後に渡辺さんが来るから、それまでに」
「うん、分かった」
『役目』のことを考えると身が引き締まる。
多分朝陽も同じだろう。
でも、あまり進んでやりたいことではない。
それが分かっているからか、朝陽は不安そうな顔で
私を覗き込んできた。
「何、その顔?」
「いや、美夜ばっか負担がかかるからさ」
「気にしてないよ、そんなの。
朝陽のおかげでこうして笑えるんだから、
私はそれで充分なの。
あ、そうだ朝陽、今日は思いっきり笑ってね」
「ん、分かった」
朝陽のおかげで笑える、これは大げさでも冗談でもない。