第16章 レトルト
大倉と安田以外は、
カウンター奥の部屋でそれぞれに過ごしていた。
錦戸「なぁ、何であの女を生かしとくねん?」
錦戸は、怒りを周りにぶちまけていた。
村上「横が、調べる事があるからや、って言うてたやろ?」
村上は惚けたように答えた。
丸山「でも、あのゲストは本当に不思議やね..」
丸山は不安の色を見せながら言った。
渋谷「一番の不思議は...胸のアザやろ?」
ソファーに横になりながら渋谷は考え込むように答えた。
錦戸「あと、俺たちを人間に戻す血...」
悔しそうに錦戸は吐き捨てた。
奥の扉から横山が入って来た。
横山「敵に勝つには敵を知ることや...」
静かに、みんなの中心にあるテーブルに疲れたように腰をかけた。
錦戸「ああ、イラつく、腹も減った」
うろうろしながら、錦戸は叫ぶ。
横山「この俺ですら恐怖を覚えたあのアザの光...
何故大倉は耐えられたんやろ? 」
渋谷「...力は大倉のほうが下やのになあ...」
横山の言葉に、渋谷は付け加えた。
丸山「思い出しただけで震える...」
怯えたままの丸山の背中を、
隣で腰をかけている村上が優しく撫でた。
安田「ただいまぁ~っ」
仲間の様子を何も知らずに入って来た安田だったが、みんなの様子を見て笑顔を振りまいた。
錦戸「ヤス、なんや…」
そんな安田の姿にイライラしながら錦戸は答えた。
その言葉を聞くと、手で座ってる横山をのけて
安田「これ、盗んで来たぁ、大倉の案でぇ」
安田は笑いながら手に持っていた紙袋の中身を、
テーブルにぶちまけた。
横山「輸血..パック...」
横山は笑いながら言った。
安田「これなら、まあ少しは...
耐えられるちゃうん?」
安田は得意げだった。
しかし、みんなは無言で輸血パックを見つめていた。
村上「まぁ、腹が減ってたらイライラするし、
ヤスも頑張ってくれたし、いただこうや」
そう言うと村上は笑いながら一つを手にした。
渋谷「吸血鬼が輸血で食事とは、
これこそレトルト食なんやろか?」
渋谷は笑いながら言った。