第10章 家族

梢
「そういえば、暦！」


1分も経たずに戻って来た。


暦
「今度は何？」


梢
「今日、“練習”は？」


暦
「…やるよ」


私が答えると、梢は寂しそうな顔をする。


梢
「…また“選手”に戻ったら良いじゃない」


暦
「戻らない」


私は、梢を押し退けて部屋を出た。


梢
「やれやれ…コートは準備しといたよ」


足を止めて、私は梢を振り返る。


暦
「私…未練がましいよね」


梢
「良いんじゃないの？ちょっとでもボールに触ってたいんでしょ」


暦
「うん…」


──これだけは、やめたくないから…