第50章 失いたくないもの
〜暦 side〜
おじいちゃんの家を出て、病院で手術後のユキに会った後、私は帰りの車に乗った。
運転してくれてる宗治も無言でいる、静かな車内で…私は中学の頃の事を思い出していた。
あの頃は、バレーをする事が只々楽しくて…他人より自分の事ばかり考えてた…
自分の好きなバレーで、自分に出来ない事をなくしたくて…全部のポジションを制覇してやる!って、色んなポジションを転々としてた。
周りから凄いと褒められるのは嬉しかったけど…他人に妬まれるのは、気に入らなかった。
私と同じくらいの練習をしてないクセに、私なんか気にせず練習すれば良いのに…そんな風に考えてた。
…それが原因で、ユキに怪我をさせるなんて…あの頃の私は思いもしなかった…
“暦は本当に凄い…入部してから、ずっとレギュラーなんだもん”
暦
「っ……」
“いつか私も、暦と同じコートに立つからね!”
暦
「…ユキ…」
“足…もうバレー出来ないかも知れないって……やっと、暦と同じコートに立てたのに‼︎”
暦
「ごめん…ごめんなさい…‼︎」
昨日も今日も言えなかった言葉を、吐き出して泣いた。