第9章 W・C
気付いてくれたらしい。
心結は、緑間に手を振り「ちょっと待って」と言って階段をかけ降りていった。
玄関のドアをあけると、その先の道路にはジャージ姿の緑間が。
「なぜお前がこんなところに」
「いや、ここわたしの家なんたけど」
「…そうか、そんなところまで来てしまったのか」
もしかしてもしかしなくても緑間は方向音痴なのだろうか。
「それより、何でこんなとこに?明日大切な日なのに大丈夫なの?」
「……変に緊張して眠れなくてな。いつもなら寝ている時間だが、気を紛らわすために走りにきたのだよ」
「わたしも眠れなくて星見てたんだ。そしたら真ちゃん来たからびっくりしちゃった。…あ、そうだ寒いし立ち話もなんだから家寄ってかない?」
心結は自分の家を指さした。
「家族がいるだろう。ありがたいが、こんな夜中に申し訳ないのだよ」
「それなら大丈夫。家誰もいないんだ」
「……旅行かどこかに行っているのか?」
緑間は不思議そうに聞いた。
「ううん、違うの。わたし今ここに一人で暮らしてるの。まぁとりあえず入ってよ」
「、あぁ。」
玄関をあけ、入ると家の中は真っ暗。
確かに二人以外に人の気配はなかった。
リビングの電気をつけると、一人暮らしにはもったいないほどの広さがある。それ以前に一軒家で高校生一人暮らしなどあるのだろうか。
見る限り、リビング以外にもたくさんの部屋があった。
座ってと促され、リビングの真ん中にある椅子に座ると、心結がお茶を持って戻ってきた。
「…ありがとう」
「いえいえ!寒かったでしょ?もう少しであったかくなると思うから待っててね!」
辺りをキョロキョロと見渡すと、綺麗に片付いた部屋に、バスケットボールが一つ置いてたあった。
その他は特に目立ったものはない。
ストーブのスイッチを押すと、心結は緑間の向かいの椅子に座った。
なんとも落ち着かない。