第19章 *紫原敦
あの日から、真ちゃんとはまた気まずい関係になってしまった。
そんなある日の練習帰り、1本の着信。
「ムッくん?」
ムッくんは、紫原敦といってキセキの世代のひとり。
身長が208センチもある。
「もしもし、ムッくん?」
「あ、空ちん?俺だよー」
「あのねー俺、明日から行くから」
ムッくんの高校は秋田県。
「そうなの!?」
「久しぶりに休みでさー。で、空ちん一緒に会おうよ、ふたりで」
「へっ!?ふたりで!?」
「やだった?ならいいんだけど」
「みんなには会わないの?」
「んー…会いたいけど都合合わないと思うし、俺、空ちんと会いたいんだよねー」
というわけで。
あたしはムッくんと出かけることになった。
「遅れてごめんねっ」
「いいよーそれより、この飴食べない?」
相変わらずおかしが好きなんだなぁ…。
「どこ行くー?」
「んー…どこでもいいよーあ、おかし買いたい」
またおかしか!
「じゃあ、おかしの量り売りにでも行こ?」
「うん!行くー♪」
ムッくんは目を輝かせた。
「たくさん買えたー」
「あたしもー♪」
あたしたちはたくさんのおかしを買った。
「ムッくん、あそこ座ろうよ」
あたしたちは近くの公園のベンチに座った。
「あ、そのキャラメルおいしそうだねぇ」
ムッくんはそう言うと、ひょいと取って食べてしまった。
「ちょっ…ムッくんひどいっ!」
「え?食べたかったの?」
「むぅ…」
「ごめんごめん、もーそんなに怒らないのー」
ムッくんはあたしの頭をわしゃわしゃっと撫でた。
「じゃあ一緒に食べよ?」
へ?
一緒に?
「ど、どういう…っ!?」
あたしの口の中に、キャラメルが入ってきた。
「んぁ…ん、んっ…///」
「どう?おいしいでしょ?」
一緒に食べるって…こういうこと…!?
「んぅ…ぁ、んっ…ムッくん…っ」
「なに?空ちんが怒ったからあげたんだよ?」
「でもっ…ん、だめ…っ///」
「甘かったね?」
頭がくらくらする。
顔も真っ赤だ…。
「今度は空ちん食べていい?」
へっ!?///
「なんて言うとでも思った?」
ムッくんはにやっと笑った。
「もぉ…///」
バカみたい、あたし。
「食べて欲しいなら遠慮なく食べてあげるよ?」
そう言うとムッくんは、あたしの顎を指でくいっと上げた。
「~~~~っだめ!///」