第45章 前方互換アノード
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「くそっ、これもだめなのかよ……!」
累計3個目のセーフハウスに、ヨンスの悪態と雷鳴が響く。
いつのまにか、外は台風のようになっていた。
分厚い雷雲が太陽をふさいで、世界はどんよりと暗い鈍色だ。
横殴りの風で、大雨の線が縦じゃなくて横になっている。
日の光がないせいか、ヨンスの顔色はひどく悪い。
傷が開いてしまったらしく、額に巻いた包帯に赤が滲んでいた。
額だけじゃない、肩からもだ。
「一部ずつですが解析できているじゃないですか」
なだめるように声をかけたのは、エドだ。
あのとき――香くんにエドが刺され、もうダメかと思ったとき、驚くべきことが起きた。
『逃……げ……ろ』
私とヨンスに振り上げた刃を固まらせて、香くんがそう言ったのだ。
友人を傷つけまいと、香くんの自我がバグに抵抗したかのように。
けれど、それが逆に、ヨンスを急き立ててしまっていた。
「全部がわからなけりゃ意味ない!」
「落ち着いてください。これまでだってひとつひとつ解決してきたではありませんか」
優しい、でも冷静なトーンのエド。
ついさっき香くんに腹をかっさばかれたというのに。
それを尋ねたら、
「平気です、痛覚はプログラムに入れてません。かわりに体力ゲージを設定しましたので、耐久値はこれで確認します」
なんて、淡々と答えられた。
人差し指で眼鏡に触れると、ピ、という電子音とともに、エドの額らへんに謎のゲージが現れる。
こんなの、まんまゲームである。
……というか、4分の1くらいしかないんですが?