第43章 In the Ghost town
「誰だ」
そこに、異物が混じりこむ。
部屋の奥から聞こえる、掠れて消えそうな、でもドスを効かせた声。
むせ返るような、血の臭い。
エドに下ろされた私は、ゆっくりと廊下を進んでいく。
声の聞こえる方へ。
生臭い、血が流れている方へ。
やがて目に入ってきた光景に、横っ面をガンッと叩かれたような衝撃を覚えた。
なにもかもが理解できず、頭が混乱する。
「どうして……あなたがここに……!?」
私の声に呼応するように、座りこむ彼が顔を上げた。
額から流れる血で左目を汚しながら、しかし右目は野生の獣のごとく、獰猛な殺気を放っている。
睨みつける視線の延長線上――手には、鈍色に光る包丁。
「――ヨンス!」
その切っ先は、真っ直ぐ私に向けられていた。