第42章 諸刃の刃の切っ先で
「あぁ、それは菊さんにもらったんですよ」
ひょっこり現れたのは、トーリスだ。
私の手元をしげしげと見ながら、若干バツが悪そうな苦笑を浮かべている。
それは、何度もスーパーなどで見たことのある、リンゴとハチミツが描かれたカレールーだった。
「甘口……!」
「米もありますよ!」
「なぜ!?」
「以前プレゼント交換会というものがありまして」
「……アルフレッドさん主催の?」
「あっ、知ってるんですね!」
いや、知ってはいないんですけど……。
にしてもチョイスが謎すぎる。
祖国よ、カレーセットて。
保存食(?)限定だったのか?
パッケージの表面に、少しだけチリが積もっていた。
なるほど。こんな茶色い謎辛ソース、馴染みのない国には手が出しづらかっただろう。
そのとき、ピコンと頭上でランプが点灯する。
私は視線をカレールーからトーリスに移し、
「試してみませんか?」
そう言うと、トーリスはキョトンとして、目をぱちくりさせた。