第42章 諸刃の刃の切っ先で
「ちょ、ちょっと待ってください! なぜ財布を!?」
「労働には正当な対価が必要でしょう?」
「いやいやいやいや!」
財布からお金を取り出そうとしているエドァルド。
それを見てハッと立ち上がり、部屋の奥に駆けていくトーリス。
さらにそれを見て、米粒をほっぺたにくっつけたままポケットをあさりだすライヴィス。
それらを必死におしとどめる私。
の、手元の皿からのんびりとたちのぼっていく、カレーの湯気。
……どうしてこうなった?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ぎゅるるる~
「あっ……」
今しがた自己紹介を終えたばかりのライヴィスから、そんな音がした。
ぶわっと赤くなる顔。
じわっと潤み出す瞳。
とっさにお腹をおさえるが、その動作をしてしまったこと自体にも、さらに顔の赤みが増していく。
だが、その背後には、10を優に越すディスプレイが眩しいくらいに瞬いていた。
「こ、これはですね、あの、その……っ」
「お、お腹すいてたんですね! 私もですよ!」
「えぇっと、いや、あのっ」
必死にごまかそうとあたふたする姿は大変かわいらしかったが、彼の背後のディスプレイには、かわいさの欠片もなかった。
規則正しいグラフを刻むもの、どこか薄暗い場所を定点で映し出すもの。
それらのディスプレイから伸びたケーブルは、液晶の操作パネルに繋げられている。
そのパネルからも、なんだかよくわからない周辺機器へさらにケーブルが繋げられている。
おそらくARDOと同じように、異変解決のための設備なのだろう。
お腹が鳴って恥ずかしがるライヴィスが、こんな大きな機械をたやすく操っているのがちぐはぐだった。