第41章 暗鬼による確信による、
姿勢を保つのもままならない。
吐き気がする。
「――信じて、たのに……っ!」
捩じ切られたような嗚咽が聞こえてきて、私の視線を否応なしに絡めとる。
「君を信じたのは間違いだった!」
アルフレッドが、私に銃を向けていた。
裏切られて傷ついた瞳が、ありったけの激情でもって私を射抜いていた。
震える銃口は、私を捉えている。
そしてその腕には、マシューが抱えられていた。
ぐったりとアルに体を預けたマシューの右腕は真っ赤だ。
濡れて鈍く光りながら、だんだんと錆びたような黒を纏っていく。
かたわらのフランシスと同じ匂いがした。
何が起きたのか、起きているのか、全くわからなかった。
ただ温い血の匂いだけがいやに濃くて、えずきそうになる。
「誰に向けてんだよっ!?」
アーサーのほとんど悲鳴に近い問いが、思考能力をわずかに呼び戻した。
フランシスがマシューに撃たれた。
この目で見た。
でも、マシューが血を流していて、アルフレッドは私を銃で撃とうとしている。
そんな“風景”は視覚から認識できたが、ただそれだけで、その風景の意味なんて全く理解できなかった。
でも、その風景の中に。
「……アルフレッドさん、銃を下ろしてください」
波紋ひとつとない水面を思わせる黒瞳が、静かに現れた。