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【ヘタリア】周波数0325【APH】

第40章 疑心または月夜にて


流れる風景を眺めながら、どうして、と思った。

まるで彼らは、私が来ることがわかっていたみたいだったからだ。

「……」

無意識に唇を噛む。

なにかが変だ。

“20時59分”を見たときから、21時のアナウンスを聞いたあのときから。

いつもと違う顔で世界が動き出していた。

しばらくののち、車がとまる。

開かれたドアのむこうには、もう何度か見たことのある扉があった。

会議場についたのだ。

案内されるまま歩を進めると、扉のすぐ内側に人影が立っているのが見えた。

息を切らして走ってきたとみえるその人物は、

「――来て、くれたんだね」

アルフレッドだった。

その瞳を見て、世界から音が消える。




Hello! と元気よくハグしてくるわけでもなく。

待ってたんだぞー! と太陽みたいに笑うでもなく。

たった今綱渡りを終えたように、どこか茫然として、安堵の表情を浮かべていた。

――アルフレッドまでもが、なにか違う。






ざわざわという喧噪が耳に戻ってきた。

聞き慣れた声が話しているのも聞こえる。

――なら私は、せめていつもどおりでいよう

「お待たせしちゃって、すみません」

精一杯明るい声で、にっこりと笑顔を浮かべてみせた。
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