第39章 錯綜と進む針と
「今夜はもうお休み下さい。随分お疲れのご様子ですよ」
言いたいことを言い終えたらしい。
上司は一礼して、部屋を出ていく。
木のこすれる音のあと、パタンと扉がしまった。
一人残された部屋の蛍光灯が、ジー、と鈍く鳴る。
上司の言うことは、間違ってはいない。
どれほど手を尽くそうと、この異変の中で全てを把握するのは不可能だ。
――菊は、より強い公子の協力を取りつけた?
――そしてアルフレッドより“真実”に近づいている?
「……っ! 俺は、なにを――」
疑心暗鬼に陥りかけている自分にハッと気づく。
皆で協力しなければならない。
それは、今さっき自分が言い、ずっと前から理解していたことのはずだ。
だからこそ、無断の研究を問いただしたのに。
マシューは一体どこに行ってしまった?
なんのために、主要なデータを、装置を破壊した?
そもそもあれは――本当にマシューか?
「くそっ!」
ドンッ、と拳を机に叩きつける。
じんじんとした電気的な痛みが拳に宿る。
目眩がした。
脳は眠りを拒否しているのに、体は疲れてひどく眠いような気もする。
窓の外では、月が煌々とあたりを照らしていた。