第39章 錯綜と進む針と
「どうして黙ってたんだ!」
バンッと机を叩く音と、怒号が重なる。
戸惑いと怒りに荒れた息遣いで、アルフレッドは上司に詰め寄った。
「そんな重要なことを――“消失点”を作る研究をしていたなんて!」
マシューの姿が消えたあと間もなく、アルフレッドは緊急の呼び出しを受けた。
そこで、研究所のデータや、一部の装置が破壊されたことを知らされた。
説明されるまでもなく、マシューの仕業であるとアルフレッドは直感した。
それから、上司や研究員の話を聞いているなかで、彼らが意図的に言及を避けている部分があることに気づいた。
追及すると、彼らの口から出てきたのは、
『“消失点”を疑似的に作りだす』
そんな恐ろしい研究を、アルフレッドに知らせず行っていたことだった。
「あなたは反対なさったでしょうから」
「そりゃ反対するよ、危険じゃないか!」
「しかし我々が先導しなければ、このたびの異変は解決できません。どのような危機も、我々がリーダーとして世界を引っ張ってきたではありませんか」
上司の口調は鋭く、迷いのないものだった。
アルフレッドは歯噛みする。
「だ、だからって、もっと違うやり方があっただろ!?」
「我々が与り知らぬだけで、他国はもっと進んだ研究をしているかもしれません。この異変のなかでは、それを把握することさえ困難です」
「でも今回は俺たちだけじゃない、[#da=1#]だって関わっているんだ!」
「ええ、X――彼女からもっと協力を得られれば、違うやり方があったかもしれません」
声には、どこかひややかな響きがあった。