第28章 on the planned system
その後。
親分が細やかな点の改善を指摘したり、私も必死に言葉を絞り出したりと、子分力(?)の問われる試練をくぐり抜けた。
大真面目に頷いているロヴィーノは、微笑ましいほどに可愛かった。
そして、皆が皿を空にしたのを見て、アントーニョが
「片付けとくわー」
と、私の手伝いの申し出をやんわり断って、空き皿を回収し、キッチンに消えていった。
「……どのくらい眠かったんだ?」
ふいに、脈絡なく、ロヴィーノが肘をついたまま尋ねてくる。
「え?」
「部屋だよ。アントーニョの部屋。眠かっただろ?」
ぶっきらぼうな口調に、記憶を想起する。
うむ、確かに眠かった。
眠くなるアロマ? ハーブ? でも焚いていたのだろうか。
その予想はバッチリあっていた。
彼の話によると、近頃、異変調査で徹夜・夜ふかしばかりのアントーニョを眠らせるために、アロマだとか、ロウソクだとかを駆使しているようだ。
料理を作ってあげているのも、ロヴィーノなりの気遣いなのだろう。
支え合う二人に再度微笑ましくなっていると、ガッチャーン! という破壊音が響く。
「ったくあのヤロー!」
ロヴィーノがサッと立ちあがり、キッチンに向かった。
あとを追うと、グラスが床に砕けて散っているのが目に入る。
そばでは、親分が「すまんな~」というような笑みをへらへら浮かべていた。
「あ、手が!」
アントーニョの右手から、赤いものが滴っている。
どう見てもトマトではない。
「いや~うっかりしてもうた」
「うっかりじゃねぇよコノヤロー! 公子、棚に救急箱あるからこいつ頼んだ」
「は、はい!」
アントーニョは、なんだかふらふらしていた。
ガラスを片付けだしたロヴィーノに一抹の不安を覚えつつ、私とアントーニョはリビングに戻った。