第27章 By the turning point
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ポケットが小さく震える。
廊下を歩いていたマシューは、足を止めて携帯を出した。
アルからのメールだった。
会議に遅刻していたマシューは、苦笑いしながらスクロールしていく。
『どこほっつき歩いてるんだい? 公子がもう帰っていっちゃ――』
「わわっ」
前を見ていなかったマシューは、誰かとぶつかった。
その拍子に携帯が手から落ちる。
「ご、ごめんなさい」
慌てて謝り視線をあげると、そこには公子が立っていた。
「私こそすみません」
公子も頭を下げ、携帯を拾うとマシューに差し出した。
「あの……携帯、大丈夫でしょうか」
不安そうに尋ねる公子を見て、マシューは、ふと違和感を覚えた。
――あのメールは、どう続いていたっけ?
「大丈夫だよ。えっと、公子さんはどうしてここに?」
「少し迷ってしまって……やっぱり入っちゃいけない場所でした?」
「そんなことないけど……」
「マシューさん、もしかして遅刻ですか?」
「え? あ、うん。そうなんだよ。異変の資料整理してたら、時間に気づかなくて……」
そうなんですか、と公子が微笑した。
公子は、4日ほど前に現れたときとは、違う服装をしている。
その日の内に戻った、という話だったから、ここにいる公子は、新たにこの世界を訪れてきた公子、ということになる。
――じゃあ、さっきのメールは? なぜ“遅刻”という言葉が出てきた?――
「……公子さん」