第25章 雨の中へ
その言葉に、一瞬、世界から音が消えた気がした。
……ええ、と。
セットで作られた、って。
この世界は、もともとは私の世界と一緒だった?
もしくは。
――私はもともと、ギルたちの世界の一部だった?
「いやいや……」
ありえない考えに頭を振る。
私は、平凡な、いちヘタリアファンだ。
コンテンツの更新に歓び、国旗グッズ集めに精を出し、「推しに住めるって最高!」とか言いながら日々を暮らす、普通の人間だ。
それが急に、救世主だとか、水だとか鍵だとか言われても。
脳がキャパシティーオーバーで停止してしまう。
「……私は、国であるみなさんに比べたら、普通すぎるほど普通の人間ですよ」
「あぁ。俺様にとっちゃ、お前が救世主だろうが水だろうが、小娘であることに変わりはねーからな」
「小娘って」
「どこの誰がどーーいう扱いしようと、どんっだけ崇めたてまつろうと、俺様にとっちゃお前はちんちくりんの小娘ってことだ。覚えておけよ」
ケセセ! と笑って、ぱしっと軽く背中をたたいてくる。
まるで、元気づけるみたいに。
気負い過ぎるなよ、俺様を頼れよ。
なんて、言葉が聞こえてきそうなくらいに。
「な、なんですかそれ」
「ん? なに目赤くしてんだよ」
「泣いてないですよ!?」
「ケセセ、俺様の偉大さを存分に味わうといいぜ!」
「ちょ、髪ぐしゃぐしゃにしないでもらえます!?」
「ケセセセ! 遠慮せず撫でられとけ!」