第31章 無責任
「未来の貴方を書きなさい」
白紙の紙を目の前に置かれる。
キラキラと目を輝かせるあの子は、カラフルな色鉛筆でどんどん描いていく。
疲れきっているあの人は真っ黒いボールペンを持ったまま、何も描こうとしない。いや、描けないんだ。
あの子の紙が色で埋まるとき、あの人は紙を真っ黒にしてボールペンを投げ出してしまった。
そしてあの子を、愛おしそうに、憎らしそうに、遠く遠く、見つめるのだ。
口から、少しの幸福さえ吐き出してしまいながら。
あの人の日常は窮屈すぎる。
何時だって、何処だって、知らない人にまで監視をされて暮らしている。
逃げ出したいのに、そんな勇気はないのだ。
監視の中を望んで、監視の中を拒んでいる。
いつか、監視の中、笑顔になれる日が来るのだろうか。
監視さえ味方につけてしまうような、そんな日は来るのだろうか。
塗りつぶされた黒い闇の中、一線の光が横切る。
そんな日は、来るのだろうか。
「未来の貴方を書きなさい」
描いたあとは、どうすればいいの?