第29章 私の望み
周りの声が、ただただ不快だった。
みんな、"言葉"を人を傷つけるための"道具"として扱い、私はその餌食となった。
声は音となり、音は騒音となった。
うるさくて、うるさくて、たまらない。
耳をふさいでも尚、ソレは私の手をこじ開け、耳をこじ開け、心に入り込み、人格すら壊そうとするのだ。
何度も何度も、私の心を壊そうと、人々は口を開く。
そんな毎日がうんざりで、
耐えられなくなったある日。
私の前に神様が現れた。
"あなたの願いを叶えましょう"
私は望んだ。静かな世界を。
とてもとても、静かな世界を。
光に包まれたと思ったその瞬間、黒い闇に包まれた。
『何故?何故?どうして神様…!』
"これがお前の望んだ世界だ!!"
神様が私にくれた世界は、真っ暗で何も無い。
騒音がない、音がない、"声"がない。
嬉しいはずなのに笑みはこぼれず、
あんなにうるさかった音がないのに耳の奥が痛んだ。
静寂に、耳の奥が傷めつけられた。
笑みの代わりに、私の目から"光"が落ちた。