第28章 満たされない
僕はずっと、"いい人"をしてきた。
自分のことでいっぱいいっぱいで、困り果てた周りの人たちに、手を差し伸べた。
周りの人たちは僕にお礼を言うと笑顔になって、それを見て僕はいつも安心した。
それでよかった。
笑顔を見るたびに、僕の心は満たされた。
でも最近おかしいんだ。
何をしても、何を聞いてても、どこか心に穴が開いていて集中できない。
なんと言うか、凄く、満たされなかった。
僕のことが好きだと言う人をこの腕に抱いた時、あったかさを感じるとと共に、やっぱり心に穴が開いていて…
満たされなかった。
なんだろう。
何故だろう。
僕はおかしくなったのか。
この穴はどうやったら塞がるの?
満たされない
満たされない
満たされない
満たされたい…。
ある日言われた。
「お前は周りにあげ過ぎだと。」
よくわからなかったけど、わかった。
僕はずっと、周りの人たちの心の容器に水を注いでいたんだ。
その水が、自分の心から注がれているとも気づかずに。
注ぎすぎて、とうとう僕の心の水は空っぽになった。
周りの人たちからもらったと思っていた水は無かった。
空っぽになっても、周りの人たちは僕の水を欲するばかりで、僕に水をくれない。
誰か僕の心に水を。
水をください。
少しでいいから。
じゃないと僕の心が…
ひび割れてしまう。
嫌だ。
壊れるのは嫌だ。
誰か、僕の心を、あなたの水で満たしてください。