第6章 祈って
みんな平等。
この工場で、
当たり前のように掲げられる言葉。
でも本当は違う。
工場で個体を作り出す本人は、
自分の好みの物には少し手をかける。
みんなより、少し持ち上げて。
みんな平等。
こと時点でもう崩れてる。
工場の掲げる言葉を守る人。
そんな人に限って工場を去って行く。
みんな平等。いつ本物になるの?
工場では今日もまた、
違うものは同じものに。変えられていく。
出来上がるのは、何も違うところがない、
綺麗な、ただの個体。
でも、そんなのに意味はない。
綺麗な個体じゃなくていい。
みんなと同じ個体じゃなくていい。
尖って、危ないところを、
少し削るだけでいい。
凸凹を無理に潰して、平らにしなくていい。
だって元が少しずつ違うから。
誰かを傷つけなければ害はないはずだから。
でこぼこでいいんだ。
それが、
それがあるから、
「ただの個体」が「人間」になる。
みんな平等。
その言葉に付け足そう。
みんな平等。それぞれに個性を。
これがいつか、現実になることを祈って。
同じような個体を作り出す「工場」が、
立派な人間を育て上げる「学校」になることを祈って。