第36章 忘れてはいけない。
夜が来て、
布団にくるまって、
暖かさの中で、
眠る。
あっという間に朝が来て、
まだ寝ていたいなぁと思って、
二度寝して、
親に怒られて、
膨れっ面で学校に行く。
学校に着くと友だちがいて、
聞いてよぉって、愚痴を聞いてもらう。
移動教室、休み時間、たまには授業中、
友達としゃべりすぎて怒られる。
屁理屈を述べながら友達と愚痴り合い、
また明日ね。って
笑って帰る。
宿題嫌だなぁって、発表嫌だなぁって、
頭を抱えて悩む。
そうしてまた夜が来て。
その繰り返し。
そんな当たり前のこと。
鬱陶しくて、騒がしくて、
楽しい時間。
ずっと前から同じこと。
これからも続いていくこと。
そうやって
錯覚していたこと。
『失ってから気づく』
これは本当のことだった。
暖かい布団で眠れなくなった。
お母さんが、お父さんが、
「起きなさい」って怒る日が
怒ってくれる日が来なくなった。
通う学校がなくなった。
友だちが、いなくなった。
宿題、なくなった。
発表も、なくなった。
でも、
でも、
やった。って、ラッキーって、
少しも思わなかった。
返して欲しいって、
返して下さいって思った。
嫌だ嫌だって思ってたのに、
今はどれも大切な時間だった。
大切な経験だった。
幸せな日々だった。