第34章 なんにもない。
教育のためだと手を上げたあの人
あっという間に晒されて、手首に輪っかがかけられた。
生徒のためだと厳しく叱ったあの人
『先生』という教育世界からいなくなった。
確かに心配だろう。
世の中は暴力に溢れつつある。
でも心から更生を願う行動も、何故後ろ指を刺されるのか。
その、区別すらつかない者共が、今の世の中、殆どを握っている。
すべてがいけないのか。
一部の声だけを鵜呑みにし、
一部の声だけを肯定し、
一部の声だけを守る。
それが間違ってるとは思わない。
だが、正しいとも思わない。
少数意見は大切だ。
だが、多数意見を無視して良い訳じゃないだろう。
手を上げたあの人。
批判するのは他人ばかりだ。
厳しく叱ったあの人。
批判するのは関係のない親ばかりだ。
本当に、本当に、その人は危険なのか。
尊敬されていたんじゃないのか。
お前らはよく言うだろう。
「失敗は誰にでもあるのだ」
その通りじゃないのか。
たしかに取り返しのつかないことだってある。
その加減を、誰が決めるのかはわからない。
しかし今、あーじゃないこーじゃないと否定する奴らばっかりだ。
人に責任を押し付けてばかりのくせに、少しボロが出ると一斉に晒す。
なんなんだこの生きにくい世の中は。
じゃあお前がやれと、
思っていても声を上げるものはいない。
危険だ危険だと全て取り去ってしまったら、
尊敬できる人すら消えるんじゃないのか。
何もなくなってしまうんじゃないのか。
甘いだけの世界がいいとは限らないだろう。
甘やかされた子がいい子だとは限らないだろう。
絶対的な判断を持つものはこの世にはいない。
みんな少なからず自分の利益を取るのだから。
一人でもいい、誰か見極めることのできる奴はいないのか。
小さくてもいい、声を荒らげるものはいないのか。
何が正しいかもわからないこの世界を変える、きっかけはないのか。