第1章 *手編みのマフラー【影山飛雄】
12月22日。
今日は私の大好きな人が生まれた日。
「かげやま、カレーまん食べる?」
「食べる」
「言うと思った。はい」
「…んまい」
影山の口にカレーまんをちぎって放り込むと、彼は幸せそうにそれを頬張った。
私の大好きな人というのは他でもない、この影山飛雄という男。
実は、ちゃんと誕生日プレゼントも用意している。
…ベタだけど、心を込めて作った手編みのマフラー。
編み物は得意じゃないけど、やっちゃんや潔子さんにも手伝ってもらってやっと完成した紺色のマフラー。
…喜んでくれるかな
「あのさ、影山」
「?」
私が声をかけると、カレーまんを美味しそうにもぐもぐと頬張ったままの彼は首を傾げた。
「…これ。誕生日おめでとう!」
鞄の中から、マフラーが入ってる紙袋を渡すと、影山は驚いたように目を見開いた。
「…開けてもいいか?」
「もちろん」
「あったけえ……ありがとな。大切にする」
「良かった…どういたしまして!」
早速首に巻かれた紺色のマフラー。自分で言うのもなんだけど、影山に良く似合ってる。
「よし、じゃあそろそろ帰ろっか」
坂ノ下商店を出ると、外はもうすっかり暗くなっていた。
「あれ、谷口マフラーしねぇのか?」
「あー…、影山の持っていかなきゃーって思ってたら自分の忘れちゃって」
そう言って苦笑すると、突然首元がふわっと何か暖かいもので覆われた。
目の前に広がる…紺色
「風邪ひくだろ。だから、入っとけ」
隣には、少し顔が赤くなっている影山。
少し長めのマフラーは、私の首元と影山の首元を一緒に暖めてくれていた。
…暖かい。
「ありがと、飛雄」
「!…こちらこそ……、ありがとな、綾乃」
12月22日。
ちらちらと雪が降る寒空の下、私と影山はそっとお互いの唇を重ねた。
*END