第9章 8日目
私は銃口を幸村から右にずらし、どうにか殺さずにすんだ。だが彼の体はもう血塗れ、助かる事はないだろう。
「...嘘、だよ」
村人達は幸村達を引き摺り、大きな台車に乗せる。銀猫の腹はもう上下にさえ動いていなかった。
「私...私のせいで...!」
猟銃を地面に叩きつけて泣き叫んだ。
全ては私が未熟だったからこうなった。全部私が悪い。
お父さんもお母さんも、よくやったと褒めてくれたけど全く嬉しくなかった。初めて両親を殺したいと思った。
「そんなにショックだったのか?」
隣の家に住んでいる幼馴染みが私の隣に座った。
「こんなの嫌だよ...なんで私が彼らを殺さなきゃならなかったの!?」
「落ち着けって」
彼らの痛みを私だけが知っている。
この幼馴染みだってわからない。
「お前が、この一週間どう過ごしてきたんだか俺にはわかんないけどさ、これは狩人になったから仕方のないことだ」
「わかってるけど...っ」
「わかってんなら、もう泣くなよ」
こうやって、私には受け入れてくれる人がいる。
幸村は死んだら、佐助達に会えるんだろうか?仲良く旅でもするんだろうか?
私の元に、現れてくれるんだろうか。
きっとこの私を、いや、人間をますます嫌いになって憎んでいることだろう。私は弱かったんだ、誰一人命を張って守れない、非力な女だった。
「...あいつら、お前の友達だったのか?」
「...うん」
「変な耳はやしてたけど...人間じゃねぇんだよな」
「...うん」
私は全部話した。
幸村達がかつては人間だった事、それもかなり昔の話だと言うこと、私を受け入れてくれた事...
そして、私の事を好きだと言ってくれた人がいたのだと。
「そう、だったのか」
「返事しようとしたら、人間らしくいろって...話を聞いてくれなかったの」
「そりゃ、を森に縛り付けないためだろ」
なんとなく、なんとなくそれは分かっていたけれど、そう言われてしまえば本心から認めざるを得なかった。