第22章 卒業
冬の終わり。
私は学年主任の先生に呼び出された。
…
「答辞…私がですか? そういうのって成績優秀者がやるんじゃ…」
私なんて学年だとせいぜい5番に入るか…入らないと思うけど。
「ああ、上から順番に進路決定済みのヤツに打診したが辞退された。男どもは気が小さいのが多くてな。その点お前なら元放送部だしそういうのは得意だろ? 受けてもらえないか?」
先生が私に説明する。
「あ、はい。私でよければ…謹んでお受けします…。あれ? こんな返事でよかったですか?」
「上等上等。じゃあ頼んだぞ」
先生は楽しそうに笑った。
まさか私が卒業式で答辞を読むなんて。
胸がワクワクしてきた。
でも…。
…
放課後、いつものように雅樹くんと2人で帰り道を歩く。
「雅樹くん、私、答辞読むことになったよ」
私は彼に報告する。
「そうなんですね。楽しみです」
彼がニッコリと微笑む。
「でも…私より先に雅樹くんに依頼あったんじゃない?」
私は疑問を尋ねてみる。
雅樹くんは私より成績上位なはず。
それに、進んでみんなの前に出るほうではないけど、頼まれて断るほどではないと思うんだけどな。
「そうですね。声はかけられました。先生に聞いてみたんです。僕が断ったら次は誰ですかって。
次は優子さんだと聞いたので、僕は辞退しました」
彼が少しニヤッと笑う。
「私に譲ってくれたの?」
私は首を傾げる。
「いいえ。聞きたいんです、僕が。優子さんの答辞」
彼が言った。
「私、頑張るね!」
私は彼の手を握った。