第12章 その12.後ろ向きはいけません
「今から凄くカッコ悪いこと言うけど、
嫌いにならない?」
大野さんが穏やかな声で首を少し傾けた。
なれるわけ、ありません。
今からフラれるっていうのに
まだドキドキするんです。
『 嫌いにならない? 』
その言葉に胸が締め付けられる。
大野さんが何故そんな答えのわかりきった意地悪を言うのか、わからなかった。
「…な、れません…」
「がさ、」と私の名前を口にだして、ゆっくり話始める大野さん。そうやって名前を呼んでくれるのも、あと何回なんだろう、大野さんの話が終わって欲しくない、そう思った。