第9章 その9.自分だけ、ではいけません
「事の真相がわかってない、って言ってんの。」
「しんそう、ですか。」
「、お前はそれ、大野さんが一生背負っていくことだと思うわけ?」
二宮先輩の言葉にあの時の自分を思い出した。
確かに…大野さんが自分を戒めることじゃない、そう思った。あれは、おじいさんの行為は、大野さんを助けたい、その一心で。なぜ自分が生き残ったんだと、大野さんが自分を責めることは、おじいさんにとって悲しいことに決まっている。
「…思いません。」
「そう思わせてるのは誰?」
「…」
「大野さんをそこまで追い込んでるのは誰かっつってんの。」
「………、」
頭の中にある名前を口にできない。
その名前を出したら、
なんだか自分が本当に酷い人間になってしまいそうで。
だって、
だって柚希ちゃんはきっと
寂しいだけなんだ。
大好きなおじいさんが突然いなくなって、
環境が少しずつ変わっていくことが
寂しいだけ。
だから大野さんを離したくないんだ、
きっと。
だからと言って、大野さんがそれを丸々背負うなんてことが出来るはずがないのも、それが間違いだってこともわかってる。
でも、
でも、それじゃあ
あまりにも柚希ちゃんが可哀想で。