第8章 Kaleidoscope(伊達政宗)
「 様、政宗様は…その、御正室に呼び出された様で……今日はお見えにならないとの事です…」
「そう…わかったわ、下がって」
「失礼致します…」
約束が守られないなんて、いつもの事。
それでも貴方を嫌いになれないのはこれのせいかしら。
畳の上に転がる万華鏡を指で撫でる。
華が欲しがった私に貴方がくれた贈り物。
「政宗様、これは?」
「万華鏡じゃ」
「万華鏡……」
「華はいつか枯れる、だがこの中に見える華は枯れぬ」
真っ直ぐに私を見つめて言ったのに。
「 への…わしの気持ちも枯れぬ、その証じゃ」
「政宗様…」
笑う貴方が眩しい。
それ以来、会えない夜は月に万華鏡を向けて眺めることが日課になった。
ゆっくり回しながら万華鏡を覗く。
色とりどりの石がカラカラと音を立てながら形を変えていく。
「綺麗…」
会いに来ると約束してくれた今宵。
貴方は現れない。
カラカラカラ…
万華鏡の回る音だけが部屋に響く。
「…?」
ふと月の光が遮られ万華鏡に光が入らなくなった。
雲でも、かかったかしら…。
「 」
「…!!」
万華鏡をゆっくりと降ろす。
そこにはずっと会いたかった人の姿。
「ま…さ、むね…様…?」
「?…何を不思議そうにしておる」
「だって…今日はお見えにならないと……」
政宗様が私の前に腰を下ろし、真っ直ぐに見つめてくれる。
「今日はを迎え入れた日じゃ」
「え…」
「馬鹿め…忘れておったか」
「あ…っ」
一年前の今日、私はここに来た。
政宗様はそれを覚えていてくれたのね…。
「来い…」
「…はい」
貴方の胸に飛び込めば、先程の悲しみなど一瞬で吹き飛んでしまう。
「政宗様…」
この人の代わりなど誰にも務まらない。
「愛しております…」
「…あぁ」
絞り出すように私が言えば、貴方は満足そうに笑う。
あぁ…また、これで…貴方を待てる…。
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(ま、政宗様っ?!着物が…///)
(日付が変わる前に愛し合わねばなるまい)
(………………っ!////)
Kaleidoscope / Hilcrhyme
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