第5章 D-tecnoLife(真田幸村)
「…殿……」
「…………来ないで、幸村」
血の海の真ん中に一人立つ彼女は、ひどく落ち着いて見えた。
彼女の足元には彼女の父の亡骸。
「やっぱり、間者は…父上だった」
「……!」
だから斬ったと、彼女は付け加えた。
真田昌幸に仕える忍、は幼い頃から幸村と共に育った。
忍らしからぬ、明るい笑顔が幸村は好きだった。
でも
今のからはもう笑顔が消えていた。
「昌幸様に報告に行く、そして私も切腹をする」
「殿!?」
「ごめん、幸村……」
そんな言葉は聞きたくない。
まだ、気持ちも伝えてない。
「……!?」
「そんなことは…させない」
彼女の腕を掴み、引き寄せる。
ここに彼女がいると、確かめるように。
「ゆ…きむら……」
「一人で背負おうとしないで」
「離して…幸村、私はっ!真田を裏切っていたのよ…?許されない…」
「それは…親爺様のしたことだ、は違う」
抱き締める腕に力を込める。
「私も共に背負おう、殿の苦しみも悲しみも…」
自らの父を討つ覚悟はどれ程辛いものだつたか。
忍の任務だと気丈に振る舞う事はどれ程苦しい事か。
「幸、村…っ」
堪えていた涙が、頬を伝って溢れ出す。
包む様に、強く抱き締めた。
「親爺様…真田は貴方を許しません……ですが貴方の一番大切な殿は私が命に換えても守ります」
「さよなら……父上」
そう告げた彼女の瞳には少し光が戻ったように見えた。
「…一つ言わせて幸村」
「…?」
「幸村が私を守るんじゃないわ」
「殿…?」
「私が…幸村を守るのよ」
あぁ、私の好きな殿だ。
力強い笑みを見せた彼女の笑顔は必ず、私が守る。
「幸村」
「はい?」
夜空には月が出ていた。
「大好きよ」
「えっ…!?////」
突然重ねられた唇から彼女の熱が伝わってくる。
心臓が煩いくらいに鳴っている、あぁ…気付かれていないだろうか。
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D-tecnoLife/UVERworld
(唇…柔らかい……)
(何…ニヤニヤしてるの、幸村)
(はっ!)
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