第14章 14日目
「にのみ―…」
視線を上げるとそこには不機嫌そうな顔をした住久くんがいた。
「手、離して下さい。」
そう言って住久くんが私の前に立つ。
彼氏いるんだったら最初から言えよ、と乱暴に言ったその二人組は住久くんのお陰でいなくなった。
「…大丈夫?」
住久くんが少し赤くなった私の腕をジッと見つめ、まるで割れ物を扱うように触れる。やっぱり少しだけ痛い。
「…あ、ごめんね!ありがとう!」
「…いや、よかった、何もなくて。
もう少し遅かったら…」
住久くんの顔が歪む。
「ごめんな、」
住久くんのせいじゃないよ。
そんな顔しなくて大丈夫だよ。
住久くんのこんな悲しそうな顔、初めて見た。
「うんん!助かった!ありがとう!」
「の彼氏さ、忙しくて
なかなか側に居られないって言ってたじゃん。」
「う、うん。」
「これからは俺がいるから。」
「え?」
「彼氏が側に居てやれないときは
近くに俺がいるから。だから、」
住久くんが真っ直ぐに私を見つめる、ふと気配を感じて右の方に視線を移すとそこには愛しい人と一人の男性。
「に…」
二宮くんの姿を見るとさっきまで我慢していたはずの怖さや、気持ち悪さや、不安が一気に押し寄せてきて涙が溢れ出す。
二宮くん!そう叫んで彼のもとへ行きたかった。大丈夫だよ、って優しく抱き締めて欲しかった。でも
二宮くんが後ろにいる男性に声を掛け、私達の前を通りすぎる。
さっきまで視線が合っていたはずなのに。
通りすぎる時は一度もこちらを見てくれず、ただ二宮君の香りだけが残った。
「……」
にのみや、くん…、
「ほら、泣くなって」
笑って抱き締めてくれたのは
二宮くんではなく住久くんだった。
『 二人きりじゃない世界 前半 』END.