第2章 ナイル・ドークから見た二人
大分経った頃、ミケは俺に言った。
「俺はエルヴィンの武器として戦うが、
おまえはエルヴィンを押し止める楔になってもらいたい」
「楔ぃ?何だよそれ」
「あいつの正義は暴走する。
それこそ多くの人間を巻き込んで、な」
ミケの言葉に俺は息を呑む。
「おまえは良くも悪くも凡人で、
俺達のようにどこか狂ってる訳じゃない。
俺達に欠けたものがおまえには存在する。
だから、エルヴィンを止められるのもおまえだけだと思う」
「・・・・・俺は・・・楔になって何を繋ぎ止めりゃ良いんだ?」
「エルヴィンの人としての心を・・・繋ぎ止めてくれ。
あいつが・・・人の心を全部無くさないように・・・・」
そう言ったミケは少し悲しそうな顔で笑った。
滅多に見ないミケの表情に、
ミケがどれだけ本気で心配しているのかわかったから、
俺はその微笑に誓ったんだ。
エルヴィンを人として繋ぎ止めてやるって。
まだ、俺がエルヴィンとミケと一緒に夢を追いかけていた頃の
青臭い思い出だ。