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おはようございます、お姫様

第1章 久しぶりね、ユイ。


大きな門の奥の奥。
お城みたいに大きな屋敷。
幼なじみがここにいる。

「……誰か、いらっしゃいますか」

ノックをしても、誰も出て来ない。
とは言え、流石に無断で人様のお屋敷に入る訳にはいかない。

もう一度、ノックをして、同じ言葉を繰り返す。

「……誰か、いらっしゃいますか」

あの子がここにいる。
それは事実、ならばここに人がいないはずがない。

あの子に連絡を取るべき?
いいえ、あの子は今携帯を持っていないと手紙に書いていた。それは不可能。

「あれあれぇ?君、何処から来たの?」

「…こちらは逆巻様のお宅でしょうか。本日からお世話になります、夜城 月音と申します」

この人、人間じゃない。
でもだからと言って何かはわからない。
無闇に探るのは余りにも失礼。この人から話してもらうまでは何も聞かない。それが正解のはず。

「月音!!」

「…ユイ。思うより元気そうね。安心したわ」

「あぁ、君がビッチちゃんの!」

『ビッチちゃん?』

聞き慣れない愛称を復唱する。
これはユイに対する呼び名?
だとしたら、こんなに純粋なユイが何故そう呼ばれるの?
彼は、ユイを馬鹿にしているの?

「お、…っと」

「ユイを馬鹿にしているの?ならば今すぐ、ユイに謝って。私は、ユイを傷付ける全てのものを、排除する」

「いやいや、違う違う。馬鹿になんかしてないよ?」

私の目から闘志が消える。
私の手が持っているナイフを鞄に仕舞う。
彼に謝らなければ。
勘違いから人に怪我をさせるところだった。

「…ごめんなさい、いきなりこんな事を」

「月音、ごめんね、言ってなかったね。この人は逆巻ライトくん」

「…そう、ありがとうユイ。ライトさん、本当にごめんなさい」

「気にしないでいいよ?それぐらいの方が面白いからね」

面白い?
興味深い、という意味?
それとも言葉のままに見下されているの?
後者だとするなら、ユイはその対象なの?
でも彼は違うと言った。ユイがここで無事なのだから、信じておくべき。
疑う事は哀しい事。それに、ユイからライトさんに向けられている感情は負の感情ではない。

「……ユイは、変わったわね」

「そう?」

「ええ。なんだかとても、大人っぽくなったわ。…ライトさんの、おかげ?」

「ち、違うよ!」

変わったわね、ユイ。
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