第33章 道化師恐怖症。
あれから何ヶ月と過ぎ
病院は無事に退院し
今は普通に学校に通っている
西崎さんは私が退院する頃
どこかに行ってしまったと聞いた
だいぶおかしくなっただろうし
もしかしたら病院かもね
余談だけど運悪く私を轢いてしまった
トラックの運転手
裁判があったらしいが
被害者である私が取り下げを願えば
なんとかなるらしいので、そうした
だってあの人も被害者
むしろその人は100%被害者だ
関係ない人の人生まで
めちゃくちゃにしたくないし
「蒼!!」
「あ、赤也。おはよう」
彼…赤也とも付き合って何日だろう
1ヵ月記念日の時
お互いに呼び捨てにしようと決めたが
なかなか慣れなくてずっと照れていた
一応、彼には全て言った
汚い私の中身をぶちまけた
全て意図的だったこと
なのに彼は笑っていた
最初に悪意を向けたのはあっちだから、と
それでいいのかと思ったが
もういいのだろう
テニス部は、結局
負けてしまったらしい
そりゃそうだ練習してなかったんだから
誰も涙を流してなかった
流せる涙はもう持ち合わせてなかった
そんな綺麗な心も
それは仕方ないことだ
「ね、蒼!
放課後ゲーセン行こうぜ!」
「いいけど、部活は?」
「今日は休み!」
あれから学校は本当に平和だ
西崎さんが消えたことで
ストレス発散の対象が消え
誰かがターゲットになるかと思ったが
みんな罪悪感を背負ったようで
特になにもなかった
ねぇ西崎さん
アナタは元気にしているのかな
元気を奪った私が
言うことではないのだけれど
きっとアナタの心には
ずっと私がいるんだろうね
トラウマにでも
なってしまったに違いない。
そんなような言葉をなんて言ったっけ
「あぁ、そうだ」
「ん?なんか言ったか?」
「んーん。なんでもないよ」
恐怖症。
きっとアナタは。
道化師恐怖症。