第2章 失恋
教室で女子とおしゃべりしながら衣装の準備をしてたら、藍田くんが教室に戻ってきてキョロキョロする。
「あ、あれ? 女子だけ? 男子は?」
藍田くんがその場にいる女子になんとなく尋ねる。
「美術室に大道具の準備しにいったよ」
クラスの子が答える。
「そうなんだ。僕も美術室にいったほうがいいのかな…。君たちは何をしているの?」
「衣装の準備だよ。大変なの。男子なんか手伝わないで私たちを手伝ってよ」
別の子が言う。
「え…。僕に出来るかな…」
藍田くんが戸惑いながら返事する。
「大丈夫だよ。私たちが手取り足取り教えてあげる。きゃはは」
女子に茶化されながらも、藍田くんは私たちの手伝いをすることにしたようだ。
あ、私の隣に座った…。
…
なぜか流れで私と藍田くん二人で下校することになった。
他の子はチャリ通だったり、まだ残ってたりで。
私と藍田くんは電車通学で同じ方向だから。
正直、私は嬉しい半分気まずい半分。
「今日、割と楽しかったな。でも鈴原さんがいないと、あんな女子の中に入っていけなかったよ。ありがとう」
彼が私に言う。
私はただ曖昧に笑う。
だってどんな返事をしたらいいのかわからない。
「働いたらお腹空いたな…。鈴原さんは? お腹減らない?」
彼がにっこり微笑んで私に尋ねる。
「うん…。お腹空いたかも」
私は答える。
「コンビニでも行って何か買おうか。それかマックでも寄ってかない?」
彼は優しく微笑んだまま、また私に尋ねる。
私は彼のその顔を見ると、やっぱりまだ心がなぜかすっごく痛い。
でもやっぱりその顔をずっと見ていたい。
「この道の裏に美味しいパン屋さんがあるよ。わたし、部活の帰りにたまに行くの。行ってみる?」