第3章 バンドコンテスト
「もう直ぐクリスマスっスねえ」
「そうだな」
朝の寒い中、通学路を俺と黄瀬は何故か手を繋ぎながら歩いていた。それはだ…朝、待ち合わせ場所での事ー
「おはようっス!椿っち」
「おはよう、黄瀬」
黄瀬はいつもの様に白い息を吐きながら、元気に挨拶してきた。俺も微笑しながら挨拶を返す。
「寒いっスね!」
「あぁ、もう本格的に冬だからな」
「椿っち」
「ん?なんだ?」
「手、繋いだ方が暖かいと思わないっスか?」
「そうなのか?」
「そうっスよ!」
そう言って強引に手を繋ぐ事になったのだ。そして現在に至る。
「椿っちは毎年、クリスマスってどう過ごしてたんスか?」
「んー…家族とプレゼント交換したり、テーブル囲んでご飯食べたり、ケーキ食べたり…ぐらいだな?」
「今年は俺とデートしに行かないっスか?」
「え?」
「恋人同士なんスからそれくらいしなくちゃっスよ!」
「そ…そうだな」
クリスマスにデートか…初めてだな、デートなんて…昔の俺だったら、絶対になかった事だ。しかも男子と。
「椿っちは何日が空いてるっスか?」
「家族とクリスマスするのが、25日だから…24日のクリスマスイブだな?」
「24日のクリスマスイブっスね?ちゃんと開けといてくれなきゃ困るっスよ?」
「わかった」
呆れたように微笑を浮かべる。何故か楽しみで仕方がない。今日の朝練はオフでいつもより遅く学校についた。手は流石に学校についてからは離して会話をした。
「大晦日はバスケ部の皆で集まって元旦とか迎えたいっスねえ」
「そんな事もするのか?」
「椿っちはやった事ないんスか?」
「あぁ…」
「だったら、尚更やるべきっスよ!楽しいっスよ!」
「楽しそうだな」
前の学校では人気はあったが、友達と言える人はいなかった。友達とワイワイやるのもよさそうだ。教室に入って席に着き、まだまだ会話は続く。
「来年は俺らも受験生っスね?」
「そうだな…黄瀬は何処に行くか決めたか?」
「え?まだ決めてないっスよ!てか、椿っち、早いっスよ!高校の事考えるの」
「そうでもないぞ?一年なんてあっという間だからな」
「そうっスけど…」
「俺は私立に行きたいって思ってる」
「私立っスか~椿っちは頭いいっスからねえ」
黄瀬はうんうんと頷く。別に頭いいからって訳じゃないんだがな…