第10章 ホンネは?
「おい、拓斗!」
陸さんが拓斗さんの方を向く。
拓斗さんは黙っている。
「お前いいのかよ、これで」
すると拓斗さんが重たそうに唇を動かす。
「いいもなにも、果奈が選んだんだから
俺にはなにも言えねぇだろ」
なんでよ…
好きならもっと強引になってくれたって
いいじゃん。
「お前が誰を好きでも俺はお前を
諦めない」とかカッコつけたこと言ってよ。
どうせその程度だったんでしょ、
拓斗さんの好きって。
だいたい、信じられないし。
もう、どうでもいい。
「果奈」
ドキン……
「幸せにな」
拓斗さんが…笑った…
なに?
なんの笑みなの?
なんで笑顔なのに辛そうなの?
拓斗さんがわからない。
「拓斗、お前…」
「ふたりで帰んな。
果奈、お前はここをやめろ。」
「え…」
「お前のここでの仕事もこれで終わりだ。」
「どうして…?」
「最後までバカだな、お前。笑
彼氏いるのに身体、売るのか?」
「!……」
「荷物まとめて早く帰れよ。」
拓斗さんが部屋から出ていく。
私も陸さんも、拓斗さんを止められなかった。
ただ、見つめることしかできなかった。