第3章 #2 CALL & RESPONSE
私には、特技と呼べるものがあった。
小さい頃から、複数の声、誰かの声真似とか、とにかく声を変えることが得意だった。
そのことで何回か問題を起こしたりしていたけど…
「名前、やるよ」
「はーい!」
また、仮面をつけてカメラの前へ立つ。
「スピンクス一号でーす」
「爆発大好き!二号でーす」
「全くセリフのない三号でーす」
「えー都庁の花火楽しんでもらえましたか?あれは僕らの手製爆弾によるものでーす。くるリンも頑張ったよ〜」
「でもこれは始まりにすぎません。近々第二の爆弾を仕掛ける予定です。
では皆さん特に警察の皆さんになぞなぞです」
「トゥルル!」
「最初は二本足次に四本足最後は三本足な〜に?
「なぞなぞが解けたら次の爆弾はあなたのもの!」
「頑張ってね〜」
ナインがカメラを切る。
本当に、セリフがない。
頑張ってね〜、しか言ってない。
「まぁまぁ、最初だしね」
「別に、気にしてないし」
と言いながら内心少し、いやかなり寂しい。
本当に私はココに居ていいのだろうか。
足を引っ張るんじゃないか。
「名前、ちょっと来い」
「はーい」
ナインに呼ばれ、パソコンの前に座る。
「今から俺たちの片方が"出前"をする」
「出前?」
「爆弾!」
ツエルブがいたずらっ子のような笑みを浮かべた。
「そこで、お前には動画をあげてもらいたい」
「匿名化ソフトのTorを使って?」
「そうだ。覚えられるな?」
「もちろん」
自分の胸をトン、と叩いて笑ってみせる。
「よし。説明するぞ」
数分して、テスト用に作ったらしい何も映されていない動画をあげることに成功した。
「…どうだ?」
「ん、わかりやすかったから大丈夫そう」
「そうか。頼んだぞ。出前に出た5分後に」
「了解、ナイン」
ツエルブもバイクの整備を終え、私たちの元に戻ってきた。
ナインはツエルブに体を向け、どっちがやる?と聞いた。
例の"出前"の話か。
じゃんけんの結果、ナインが行くことになった。
長寿庵の出前セットを持つナイン。
どこから手に入れた、と聞きたくなるのを堪えながら、ナインを送り出す。
5分後、か。
「名前」
「なに?」
ソファに座っていると、ツエルブが隣に腰掛けた。