第5章 トカゲ・グレイ=リングマーク
「グレイ!」
一通りの仕事を終えたであろう彼に声をかける
窓辺で煙草を嗜んでいるグレイからは、煙草の香りと、どこか色気が漂ってくる気がした
その仕草だけで絵になる
「また煙草?肺を悪くするわよ?」
「あぁ、君は煙草が嫌いだったな。すまない」
申し訳なさそうにまだ少し長い煙草の火を消す
「私は気にしないで!それに、煙草を吸っているグレイは格好いいと思うわ」
「…そうか?」
照れたような表情も、普段の彼なら滅多に見せない
気を許してくれているのを感じて、アリスは嬉しかった
「ところで、わざわざどうしたんだ?…まさか、目を覚ましたナイトメア様がまた何かしでかしたとか…!」
「いや、そうじゃないの!…えっと…、その…。何かグレイの役に立てることはないかと思って…。ほら!ナイトメアがああだから、私でも手伝えることをしてグレイの負担を少しでも軽くできたら、って…」
頬を染めて早口でまくし立てるように話すアリスに初めは驚いたグレイだったが、だんだんと優しい表情になる
「…君は、本当に優しい子だな…」
グレイの大きな手が、彼女の頭をぽんと叩く
それだけでアリスの心は大きく揺れた